子どもの成長は本当にあっという間だと、誰もが実感するものではないでしょうか。
けれど私には、その変化を間近で見守ることが叶わない現実がありました。
第一子が誕生した直後、私は中国への海外赴任を命じられました。
当時は仕事にもやりがいを感じており、キャリアのチャンスとして前向きに捉えていました。
しかし、体の弱い妻と高齢の義両親を考慮し、家族を日本に残し単身での赴任を選択。
今振り返れば、あの選択が家族との距離を決定づけた瞬間だったのかもしれません。
当時はまだ今のようにテレビ電話や高画質な写真共有ツールもなく、
遠く離れた地で子どもの成長をリアルタイムで感じることはほとんどできませんでした。
せめてもの思いで、金曜の夜に現地を飛び出し、週末だけでも日本に戻って子どもと過ごし、
月曜の朝には再び任地へ向かう──そんな日々を何度も繰り返しました。
けれど、子どもにとってその“数十時間”は記憶に残るには短すぎたようです。
言葉を覚え、歩き出し、笑い、泣き、感情を表現するようになっていく過程を、私はほとんど見られませんでした。
いまも単身赴任は続いていますが、わが子にとって私は「たまに会う大人」以上の存在ではないのかもしれません。
目の前にいるのに、どこか壁を感じる──そんな距離感が、心の中に刺さったままです。
もしもう一度選べるとしたら、私は違う道を歩んでいたかもしれません。
家族と過ごす時間を、もっと大切にできていたのではないかと。
そう思わずにはいられません。
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